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けい酸塩系表面含浸材の試験方法(案)について
JSCE-K 572-2018の試験方法の解説

現在の【けい酸塩系表面含浸材】の試験方法はJSCE-K 572

シラン系表面含浸材と試験方法が異なりますのでご注意ください

【けい酸塩系表面含浸材】の試験方法は、2012年に定められた土木学会「けい酸塩系表面含浸材の試験方法(案)」JSCE-K 572です。(2018年改訂JSCE-K 572-2018)


2012年以前は、2005年に定められた土木学会「表面含浸材の試験方法(案)」JSCE-K 571による評価を行っており、【けい酸塩系表面含浸材】の各メーカーは、JSCE-K 571での試験値をカタログスペックとして掲載していました。


 


JSCE-K 572とJSCE-K 571の試験方法は似通っているのですが、試験用基板および試験体の配合や作製方法、各種試験の温度および相対湿度の規定が異なるので、試験結果の比較をすることはできません。(CL137号81頁より)JSCE-K 571(シラン系)は「A、B、C」の劣化要因に対する性能のグレードが示されていますが、JSCE-K 572(けい酸塩系)には評価基準として示されている性能のグレードはありません。


 


※新設のモルタル基板での試験となります。(水酸化カルシウムが豊富)


JSCE-K 572試験一覧


 


反応性確認試験

【けい酸塩系表面含浸材】の基本性能である水酸化カルシウムとの反応性を確認する試験

試験管ごとにセメントペースト片および【けい酸塩系表面含浸材】と比較用の純水をそれぞれ入れ、試験管内溶液の白濁状態を観察します。純水と比べて目視で白濁が認められられる場合、水酸化カルシウムとの反応性を有するものと判定されます。



 


 


乾燥固形分率試験

【けい酸塩系表面含浸材】の乾燥固形分量の確認試験

温度105±5 ℃の恒温槽を用いて【けい酸塩系表面含浸材】を乾燥させる試験。乾燥前、乾燥後の質量により乾燥固形分率を求めます。



種類判定試験

【固化型】と【反応型】の判定試験(試験は2段階)

試験により確認される【けい酸塩系表面含浸材】の性質


【固化型】:乾燥固形分の難溶性

【反応型】:乾燥固形分の可溶性と水酸化カルシウムとの再反応性

 


手順1. 乾燥固形分の溶解性の確認


温度105±5 ℃の恒温槽を用いて【けい酸塩系表面含浸材】を乾燥し得られた乾燥固形分を粉砕し、純水に溶かし72時間後溶解しているか確認します。


 


(1)乾燥固形分の沈殿物が残り、乾燥固形分が難溶性である場合


→固化型けい酸塩系表面含浸材と判定

(2)乾燥固形分が溶解し、乾燥固形分が可溶性である場合


→手順2に移ります

 


【手順1.(1)の様子】


沈殿物が残り、乾燥固形分が難溶性なので【固化型】と判定


 


【手順1.(2)の様子】


乾燥固形分が溶解し、乾燥固形分が可溶性と判定


※この時点では【反応型】と判定されていないので注意


 


手順2. 乾燥固形分水溶液とセメントペースト片の反応性確認試験


乾燥固形分水溶液(手順1の②で得られた乾燥固形分が溶解した液)をろ過して得られたろ液にセメントペースト片を投入して白濁状態を確認します。(最長28日間観察)


 


(1)白濁がある場合


→反応型けい酸塩系表面含浸材と判定

(2)白濁がない場合


→けい酸塩系表面含浸材以外の材料と判定

 


【手順2.(1)の様子】


乾燥固形分水溶液にセメントペースト片投入後、白濁したので【反応型】と判定


 


【注意】けい酸リチウム配合タイプの表面含浸材 =【固化型】とは限りません


市販のけい酸塩混合型表面含浸材の【固化型】と【反応型】の判定は、メーカー公表の配合している成分情報のみでなく、種類判定試験結果も参照の上判断をお願いします

当社のけい酸塩混合型表面含浸材【L-OSMO反応型SG】(けい酸リチウム・けい酸ナトリウム・けい酸カリウム配合)は、けい酸リチウムを成分に含んでおりますが【反応型】です。


外観観察試験

【けい酸塩系表面含浸材】によるコンクリートの外観変化の有無を目視で確認する試験


含浸深さ試験

【けい酸塩系表面含浸材】の含浸深さを評価する試験

【けい酸塩系表面含浸材】に含まれるリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンにより、【けい酸塩系表面含浸材】が含浸したコンクリート表層部のアルカリ金属イオン濃度が増加する作用に着目し含浸深さを評価します。試験体からマイクロドリルまたはマイクログラインダーを用いて採取した粉体試料からアルカリ金属イオン濃度を測定し、原状試験体より30 %以上濃度が増加した範囲を含浸深さと判定します。



【注意】含浸した範囲が必ずしも改質されたとは限らないことに留意してください


含浸材の効果は、透水量試験などの試験結果で確認してください。(CL137号103頁より)


透水量試験

【けい酸塩系表面含浸材】の防水性の確認試験

7日間の透水量を、【けい酸塩系表面含浸材】塗布試験体と無塗布試験体とで比較します。



吸水率試験

【けい酸塩系表面含浸材】の防水性の確認試験

試験体を水に浸漬させ、試験開始時の質量と7日間後の質量変化を、【けい酸塩系表面含浸材】塗布試験体と無塗布試験体とで比較します。



 


中性化に対する抵抗性試験

【けい酸塩系表面含浸材】の「中性化」抑止性の確認試験

手順1. 試験体の促進中性化


試験体を二酸化炭素濃度5 %の環境下で28日間促進中性化します。


手順2 中性化深さの測定


促進中性化試験終了後の試験体を割裂し、試薬(フェノールフタレイン溶液)を噴霧し中性化深さを測定し、【けい酸塩系表面含浸材】の塗布面と無塗布面とで比較します。



塩化物イオンに対する抵抗性試験

【けい酸塩系表面含浸材】の「塩害」抑止性の確認試験

手順1. 試験体の塩分溶液への浸漬


試験体を濃度3 %の塩化ナトリウム水溶液に63日間浸漬させます。


手順2. 塩化物イオン浸透深さの測定


塩化溶液浸漬後の試験体を割裂し、試薬(硝酸銀溶液)を噴霧し塩化物イオン浸透深さを測定し、【けい酸塩系表面含浸材】の塗布面と無塗布面とで比較します。



スケーリングに対する抵抗性試験

【けい酸塩系表面含浸材】の「凍害」抑止性の確認試験

JSCE-K 571にはない試験項目です。


手順1. 吸水工程


試験体を濃度3 %の塩化ナトリウム水溶液に深さ5 mm程度になるように7日間浸漬し、吸水させます。


手順2. 凍結融解


凍結融解60サイクル後の累積スケーリング量を【けい酸塩系表面含浸材】の塗布面と無塗布面とで比較します。


【1サイクル(12時間)の内訳】


①20℃から-20 ℃までの凍結工程(4時間)→ ②-20の温度保持(3時間)→ ③-20 ℃から2 0℃までの融解工程(4時間)→ ④20 ℃の温度保持(1時間)



ひび割れ透水性試験

【けい酸塩系表面含浸材】のひび割れ閉塞性の確認試験

JSCE-K 571にはない試験項目です。


【けい酸塩系表面含浸材】を評価する上で重要な試験項目です。


手順1. 試験体への0.2 mm以下のひび割れの導入


原状試験体をVU管に挿入し、底面および隙間をエポキシ樹脂で充填し、50 mmの長さに切り出し、載荷試験機を用いて載荷し0.2 mm以下の貫通するひび割れを導入する。


手順2. 【けい酸塩系表面含浸材】塗布


ひび割れを導入した試験体に【けい酸塩系表面含浸材】を塗布します。(加圧する側の反対面に塗布)


手順3. 水頭圧1 mを作用させての透水量試験


水頭圧1 mを作用させることができる試験装置を用いて、14日間透水量試験行い、透水量を【けい酸塩系表面含浸材】の塗布試験体と無塗布試験体とで比較します。




図1 ひび割れ透水性試験概略図


土木学会.けい酸塩系表面含浸工法の設計施工指針(案).2012年.91頁.図6 ひび割れ透水性試験体加圧部の例より作成


加圧透水性試験

【けい酸塩系表面含浸材】の水圧環境下での効果確認試験

JSCE-K 571にはない試験項目です。


【けい酸塩系表面含浸材】を評価する上で重要な試験項目です。


※設備を保有している機関が限られている試験です。(当社は建材試験センターに委託)


 


試験体を透水試験用圧力容器に設置し、透水試験用圧力容器の上部の空間に水を注入し、窒素ガスを用いて水圧0.5 MPaを48時間加圧します。48時間経過後試験体を割裂し、水の浸透深さを【けい酸塩系表面含浸材】塗布試験体と無塗布試験体とで比較します。



 



 


 


 


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